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ペパボ研究所の論文がIEEEの国際会議「COMPSAC 2024」に採択
GMOインターネットグループのGMOペパボ株式会社(代表取締役社長:佐藤 健太郎 以下、GMOペパボ)で、インターネットに関する新技術の創造と実践に取り組む研究開発組織「ペパボ研究所」は、多様かつ継続的に変化する環境における迅速で正確な意思決定のための多腕バンディット方策に関する論文が、IEEE Computer Societyのカンファレンスである「COMPSAC 2024」にフルペーパーとして2024年4月14日(日)付けで採択されたことをお知らせいたします。
本論文は、Webサービスにおいてユーザーに快適な体験を提供するために必要な試行錯誤時における、機会損失を低減するための意思決定手法に関するものです。
今回の採択に伴い、2024年7月2日(火)~4日(木)に大阪で開催されるカンファレンスにて本論文を発表します。
今後も、「ペパボ研究所」は新技術の創造を目指し、引き続き研究開発を進めてまいります。
論文について
Yusuke Miyake(GMO Pepabo, Inc. / Kyushu University), Ryuji Watanabe(GMO Pepabo, Inc.), Tsunenori Mine(Kyushu University)
(和訳)『重み付き逐次ガウス過程回帰を用いた非定常かつ非線形な多腕バンディット方策』
三宅 悠介(GMOペパボ株式会社 / 九州大学)、渡辺 龍二(GMOペパボ株式会社)、峯 恒憲(九州大学)
概要
ECサイトをはじめとするWebサービスでは、ユーザーにとって快適な体験を提供することがサービスの成功に不可欠です。サービス運営者は、デザインや機能などの改良を試みながら、より多くのユーザーが利用しやすいサービスを提供するため日々試行錯誤を重ねています。そのためには、どの施策が良いかを判断し、即座にサービスに組み込んでいくことが必要になります。
最適な施策を判断するためには、Webサービス上で試行するという手法が取られることが多くありますが、試行時点では有効な施策であるかが不明なため、ユーザーが不便に感じるようなデザインや機能を提供してしまい、ユーザーの離脱に繋がり機会損失となる可能性があります。
この機会損失の低減は、常に変化する複雑な動向を捉える多腕バンディット問題(※1)であると言え、これまでこの問題に対する多くの方策が研究・提案されてきました。
機会損失を低減しつつ、最適な施策を得るためには、サービス運営者における試行錯誤への障壁を取り除き、多様かつ継続的に変化するユーザーニーズに即座に適応することが必要です。そのためには、(1)ユーザーの状況と求めることとの複雑な関係を理解すること、(2)時間の経過による有効性の変動に迅速に追従すること、(3)評価の継続的な更新を高速に実施するという3つの要件を全て満たす必要がありますが、従来の方策ではすべての要件を満たすことは困難でした。
そこで本論文では、3要件に対してそれぞれ、(1)ガウス過程回帰(※2)モデルの採用、(2)忘却係数の導入、(3)逐次学習の仕組みとの統合により、これらの要件に応えられる方策を提案しています。また、これらの組み合わせにより生じてしまうガウス過程回帰の予測分布の推定誤差を任意のタイミングで正確に補正することで、予測分布の推定精度と計算時間のトレードオフを解決しています。シミュレーションによる実験では、提案した方策が機会損失の低減性能を維持しながら、計算時間を大幅に削減することが可能であることが示されました。
GMOペパボではサービス運営においてAI活用を推進(※3)しており、施策の検討や実現の効率化が図られています。提案する手法により、今後更に加速していく施策の試行錯誤に関する負担を減らし、迅速かつ正確なユーザーニーズへの適応を実現していきます。
IEEEについて
IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)は、アメリカ合衆国に本部を持つ、世界最大の電気工学・電子工学技術の学会です。対象となる情報の範囲はコンピュータや持続可能なエネルギーシステム、航空宇宙、コミュニケーション、ロボット工学、ヘルスケア等多岐に渡り、190超の国々の専門家46万人以上によって構成されています。
「COMPSAC 2024」について
「IEEE COMPSAC」とは、IEEE内に設置されているテクニカルソサイエティ「IEEE Computer Society」による、コンピュータソフトウェア分野の主要な国際会議で、2024年のフルペーパーの採択率は約24%(※4)と、難関国際会議の一つです。今回で48回目の開催となる「COMPSAC 2024」(The 48th IEEE International Conference on Computers, Software, and Applications)は、「Digital Development for a Better Future(より良い未来のためのデジタル開発)」をテーマとしています。