ペパボエンジニア約100人に聞きました

第1話
2016年のトピックベスト10
第2話
2017年注目のトピックベスト10
番外編
ランキング一覧

今回の登場人物

柴田 博志

柴田 博志
チーフエンジニア。今一番興味がある技術トピックは、コンテナのオーケストレーションをプロダクションでどう活用するか、さらにどう構築するか。

常松 伸哉
技術部技術基盤チームのプリンシパルエンジニア。今一番興味がある技術トピックはOpenStackと、よりよいサービス基盤の構築。

三宅 悠介
技術部研究開発チームのプリンシパルエンジニア。「minne」を経て、2017年からはペパボ研究所に。今一番興味がある技術トピックは機械学習。

中島 大地
minne事業部プロダクトチームのプリンシパルエンジニア。今一番興味がある技術トピックはNSTouchBar

毎年恒例のペパボエンジニアによる、2016年1年間の総決算と2017年大予測企画。今回はちょっと趣向を変えて、ペパボのエンジニアに実施したアンケート結果を元に、プリンシパルエンジニアたちがあれやこれやとコメントする座談会をお届けします。

第1話:2016年のトピックベスト10

──それでは早速、みなさん自己紹介をお願いします。
柴田
チーフエンジニアの柴田です。2016年は注力事業の「minne」をインフラからアプリケーションまで、ウェブ、モバイルを横断して見ていました。
常松
プリンシパルエンジニアの常松です。サービスを横断して、いろいろな取りまとめやプロジェクトの音頭取りをやっています。2016年は特に、Openstackを利用したプライベートクラウドである「Nyah」のバージョンアップに注力していました。
三宅
プリンシパルエンジニアの三宅です。僕は福岡で「minne」を中心に開発運用をしています。最近はログ基盤の開発に携わっていて、「minne」だけでなく全社で活用できる基盤にするため、機械学習などを参考にしつつ開発に取り組んでいます。
ナカジ
私、「minne」でiOSエンジニアをやっております、中島大地 a.k.a. nakajijapanと申します。
──ナカジさん、普通に喋っていいんですよ。
ナカジ
はい。「minne」では、プリンシパルエンジニアとしてiOSアプリの技術的な指針を示して音頭を取ったり、日々の開発の中でこぼれ落ちたタスクのフォローや環境整備などをやっています。
──自己紹介ありがとうございました。それではさっそく、ペパボのエンジニアに聞いた2016年の技術トピックベスト10を発表していきましょう。その中で、2017年に注目するトピックとしても登場するものは、のちほどまとめて話してもらおうと思いますのであらかじめご了承を。

【第10位:Microsoft】

──第10位はMicrosoftということなんですが、ここ最近、Bash on Ubuntu on Windowsとか、今までとは異なるオープンな新製品をどんどん出している部分に感銘を受けた人が多いようです。おそらく社内で最もMicrosoft製品を使っている柴田さん、コメントをお願いしたいのですが。
柴田
僕はいろんなプラットフォームを使うのを趣味にしてるんで(笑)。Microsoftは、エンタープライズ領域、特にSIerに広く使われているプラットフォームですね。これまでは正直、Webサービスの開発をする場合は「会社の端末がWindowsだから開発しにくい」とか「生産性が低い」みたいな話も聞いていました。しかし、WindowsでのWebサービスの開発効率が上がることになると、そういった企業のWebサービス領域の生産性が急上昇する可能性もあるわけです。例えば近年は日経のような、100年級の歴史を持つ企業が内製化を進めてモバイルネイティブなサービスをどんどん出してきています。この流れとMicrosoftのオープン化が合わさることで、 お金も人材も技術力も持ったエンタープライズ勢が、われわれウェブ企業にとって大きな競争相手になるということを僕は危惧しています。
──OSSを活用して高い生産性を誇ってきたウェブ企業にとって、大企業の参入は脅威ですね。
常松
このままいくと、1、2年後には情勢が変わってしまう可能性もありますね。
柴田
ちょっと話が逸れてしまいましたが、Windowsも開発手段として選択肢に入れつつ、情報を引き続きキャッチアップしていかなきゃなと思っています。
──さて、第9〜4位にランクインしたトピックは、なんと後半のランキングにも登場してきます…。ということで割愛して、早々に3位まで駆け上がってしまいましょう。
一同
あ、そうなっちゃうんだ(笑)

【第3位:mruby】

──第3位はmruby。これがランクインしてくるのはいかにもペパボらしいという感じです。組み込み分野向けのRubyのサブセットみたいなものですね。ペパボ福岡にいるmatsumotoryさんが、httpサーバに組み込むngx_mrubymod_mrubyを作ったのがきっかけで、mrubyの立ち位置がソフトウェア自体の拡張言語のように変化しつつあるような気がします。
三宅
僕たちのようにウェブサービスに関わる人間からすると、ミドルウェアをプログラマブルに拡張・制御できるように考え方が変わったことで、インフラとアプリケーション双方のエンジニアの垣根がなくなったことが画期的でした。今は既存のものを利用したりgemを書いたりするだけではなく、仕組みそのものを作るところに参加するようになったということもあり、エンジニアの意識も空気もがらりと変えた技術だと思います。
──ミドルウェアの中身を、自分たちの好きなように動かせるようになったという感じですね。東京のインフラチームではどう活用しているんでしょうか?
常松
特にウェブサーバーで、“動作や仕様がかっちりと決まっているものだから、自分たちで簡単に触ることはできない”という先入観がなくなったのが印象的でした。例えば、このURLの場合はキャッシュするとか、セッションにこの値があるとにはプロキシ先のバックエンドを変えるというときには、以前はインフラエンジニアだけでは難しいのでアプリケーションエンジニアにも依頼して、と行っていたのが、自分たちでやれるじゃんとなってngx_mrubyのmrubyコードで一箇所にまとめるというような使い方です。結果的にレガシーなアーキテクチャや余計なミドルウェアを駆逐できたという事例もありました。他にお客様に直接価値を提供できた事例として、動的証明書読み込みによって「グーペ」や「カラーミーショップ」で独自ドメインSSLのオプションを実現したのがいちばん印象に残っています。東京のインフラチームではそういう、ASPサービスのかゆいところに手が届くみたいな使い方が多かったんですけど、福岡はホスティングらしく帯域制限や同一接続制限に活用したり、使い方にも違いが見えてすごく楽しい1年でした。
──mruby-cliでワンバイナリで配布できるのも、インフラエンジニアに好まれている要因なのかもしれませんね。2016年のペパボは、間違いなく世の中でも最もmrubyを使った企業のひとつですし、2017年は引き続き、選択肢のひとつに自然と入ってくる感じがします。
──第2位のトピックも2017年にランクインしているので、ここでは割愛です(笑)。ということで、ペパボのエンジニア約100人に聞きました、2016年、一番印象に残った技術トピック、栄えある第1位は…
常松
どるるるるる・・・。
柴田
だん。
──機械学習です。
柴田常松
どぅーん。

【第1位:機械学習】

──ここで言う機械学習には、AIやディープラーニングも含まれています。コメントの中でも一番多かったのは、やっぱりAlphaGoの話題でした。
常松
ぶっちぎりの1位ですね。
──ぶっちぎりの1位なんですが、実は2017年のランキングにも登場するので、詳細はそのときに…。
柴田
続く。

第2話:2017年注目のトピックベスト10

──それでは続いて、2017年に注目したい技術トップ10を紹介していきます。

【第10位:PHP7】

──10位はPHP7。最近Rubyの話で盛り上がることが多かったペパボですが、PHPで作られているサービスはしっかりバージョンアップしてモダンにしていこうと動いています。その中で、一番早くPHP7に対応したサービスにはCTO賞を贈呈しますという話をして発破をかけているわけで…。
柴田
CTO賞ってキャリーオーバーあるんですか?
一同
(笑)
──積み上げてもメリットはないです!
常松
動きは結構見られるつつあると。
柴田
まずはがんばって5を7で動かしました、という形でもやる意味はあると思います。ペパボにはたくさんPHPのサービスもあるので、PHP7 にすることでCPUに余裕ができれば嬉しいし、メリットはたくさんありますね。
(※)編集者注:2017年1月に、「グーペ」が一番乗りしました!
──PHPについてはカンファレンスに登壇するエンジニアもいるし、ペパボの中では引き続き熱いトピックですよということですね。目立っているRubyだけでなく、その他の言語についても同じことが言えますよというのも、改めてお伝えしておきたいですね。

【第8位:Rust】

──8位はRustです。
柴田
おお。僕自身はまだRustのプログラムを書いたことがないんですが、RustはGCがないので、Cを置き換えるならGoよりRustだろうというRust派の言い分はよく耳にします(笑)。周囲にも最近勉強し始めたという人が増えてきました。
三宅
アプリケーションのリクエスト1回に対して直列で処理をひとつ実行、というのは時代の要請に合わなくなってきつつあります。GoやRustを活用した並行処理を組み込んだ実装については、2017年以降に盛り上がりそうなトピックですね。その中でも書き方については、しばらくは模索の時期になるなあと個人的には思っていますね。
──アーキテクチャがどんどん進化していく中で、ペパボでもいろいろ検討していくことが必要ですね。

【第8位:Ruby】

──2016年は7位にランクインしていたRubyが、Rustと同票で8位にランクイン。これについてはもちろん、柴田さんにお伺いしましょう。2016年のRubyはどうでしたか?
柴田
2016年のRubyは、Ruby3.0のマーケティングをひたすらやっていました。今はまつもとゆきひろさんの提唱するリリースの必要条件をRubyコミッターたちががんばって開発している段階です。すべてが揃ってから一気にバージョンを上げるかどうかはまだわかりませんが、できたものから徐々に2系に入れて行くかもしれません。
──Ruby3.0は数年後にリリースを予定しているんですよね。
柴田
はい。2016年は、Rubyコミッター笹田さんが、必要条件のひとつである Concurrency(並行性)を実現するためのコンセプトであるGuildを発表しました。スレッドを意識しなくても、スレッドプログラムのようなことができる仕組みです。その他の条件であるソフトタイピングについては、コンセプトの要求はあるけど実装はされていない段階です。
──実現した人は、Ruby3.0の目玉機能をリリースするということにもなりますね。
柴田
まつもとさんのソフトタイピングのコンセプトがカンファレンスで発表されるたびに、大喜利みたいにコメントが寄せられるんですが、Ruby開発者の中ではもう実装待ちのフェーズまで来てるので、コメントはいいから誰か早く作って!って気持ちです。
──早く使いたいですもんね。
柴田
はい。Ruby のプログラミングパラダイムに関わる大きな部分はその二つで、パターンマッチングやJITコンパイラについては、コンセプトも実装もかたまりつつある中で、どれを採用するかという状況です。あとはFixnumとBignumというクラスをIntegerとしてひとつにしたり、コンピューター資源の拡張に伴った仕様変更は引き続き進めています。ElixirやGoにはまだまだ負けないぞっていう気持ちで開発しています。
三宅
仕事で使うものに対しては、RubyとRailsには安心して身を任せられるという感じがあるので、引き続きお世話になります。
常松
投票と一緒に書いてあるコメントに「ペパボに入社して、Rubyのメジャーライブラリの開発陣との距離が近い世界観に衝撃を受けた」というのがあるんですが、こんなふうに刺激を受けてもらえる環境はペパボの強みだなと思いますね。
──なかなか面白い環境ですよね。
柴田
SciRubyっていうのがあって、Rubyアソシエーションという、Ruby開発を支援する団体が毎年開発助成を実施しているんですが、2016年度は採択された4件すべてが科学技術系のプロジェクトだったんです。Pythonがメインの科学技術計算の領域に、Rubyもライブラリを拡充して、Pythonと同じことができるようにしようとする動きについては、支援団体だけではなくRubyコミッターの間でも協力して課題解決に動かねばという気持ちでいます。2017年はそっちも頑張るぞっていう状況ですね。
──Rubyを普段使ってる人からすれば、アプリケーションと同じ言語で書けるほうがいいですもんね。楽しみにしています。
柴田
乞うご期待!

【第7位:Swift】

──7位は、2016年のトピック9位にもランクインしていたSwiftです。ここはもちろん、モバイル担当ナカジさんにお話を聞きましょう。
ナカジ
最初にSwiftが発表されたのは2014年のWWDCなんですが、僕はそのとき現地参加していたんです。会場の参加者全員がわっと興奮した光景を今でもすごく覚えています。発表の直後にドキュメントを読んで、便利だし、なにより楽しそうだなと思って勉強を始めました。それから「minne」のiOSアプリもSwiftに移行するプロジェクトを進めて、今は全体の30%くらい移行が完了しています。Swift自体のバージョンアップにも対応できるよう意識しながら、プロダクトをアップデートしていかないといけないと感じています。
柴田
Swift3が最新?
ナカジ
そうです。次に出るSwift4の目標のひとつとなっているのが、文字列の処理。例えばPerlだと1行で完結するものが、iOSでは何行も書かないといけないという問題があります。これを、Swift4ではPerl以上に簡単便利なものを実装しようという動きがあって、開発者は待ち望んでいるところです。
柴田
具体的には、置換や正規表現マッチの問題?
ナカジ
そうですね。正規表現も使いやすいとは言えない部分があるので…。
──Swift自体の言語的な仕様は安定していますか?
ナカジ
2から3に移るときに互換性はほぼなくなりました。仕様も変わったし、ライブラリも使えなくなってしまったので、書き換えるのはとても大変でした。安定してほしいと願ってます…。
──ナカジさんはスタイルがOSS寄りというか、プライベートで作ったものをどんどんプロダクトに活かしている印象がありますね。
ナカジ
「minne」の方向性にあわせたい部分は、Objective-Cで作っていたライブラリをSwift2.3にして、今後Swift3に移行できるように自作しています。
──その他にSwiftに関して、2017年に取り組んでいきたいことはありますか?
ナカジ
ただ単にiOSアプリを作るんじゃなくて、SwiftでMacアプリを作るところに興味があります。実際に2、3個作ってみたのですが、モバイルやPCにかかわらず、クライアントアプリを作るのは楽しいなと思っているところです。2017年は、最近出たMacBook Proに搭載されているTouch Barが面白そうなので、活用してアプリを作ってみたいですね。

【第6位:Elixir】

──6位はElixirです。2016年に印象に残ったランキングでも8位に食い込んでいたので、善戦していますね。ペパボにはじょーくんというElixir大好きなエンジニアがいて、お産合宿10でアプリケーションを作ったり、勉強会を開いたり、熱心に布教活動をしていたのが功を奏しているのではないかと思います。三宅さんは、Elixirについて何か思うとこありますか。
三宅
新興言語という意味では、一年前は、Goがこの位置にいたのかなという気がします。GoもElixirも、2016年だからとか、流行っているから、ではなく、エンジニアとして勉強が必要だと考えています。
──ウェブアプリケーションをひとつ作るにあたっても、いろんなコンポーネントが必要になっている現在は、Microservicesの中のミドルウェアを作る言語としても使われている一面があるのかなと感じます。Elixirの場合は、Phoenixみたいなフレームワークを使ってウェブアプリそのものを作ることもできるとは思いますが、このような動きをRubyコミッター柴田さんはどう見ていますか?
柴田
出来てから20年くらい経つRubyに比べて、ElixirとかGoは後発の言語だけあってよくできてるんですよね。使い始めるまでの準備がほとんど必要ないんです。ここ3、4年で出てきた言語は古い言語のややこしい部分を全部解決していて、なかなか悔しい感じですね。Rubyでもできるようになるといいな〜みたいのが非常に多いので、いつか真似したいと虎視眈々と狙ってます(笑)。
──言語的にはRubyを参考にして作られていると思うんですが、ツールチェーンが最初から整っているのは、後発言語の強みですね。柴田さんが新しい言語をどんどん勉強するということは、Rubyがいいところをどんどん取り入れるようになるということなので、2017年もぜひお願いします!

【第5位:IoT】

──5位はIoTです。2016年に印象に残ったランキングでは、6位にランクインしていました。一言でIoTといっても、コメントを見ると着眼点が多岐にわたっています。AWSやサーバレスアーキテクチャを含む、ひとつはIoT周辺のネットワークが整備されてきたことについて。デバイスそのものについても、社内でもMake部という有志のグループがあって、Ogaki Mini Maker Faireに出展したり、中国の深センに行ってみたり、デバイスを実際に作ったりする人も出てきて盛り上がってきていますね。参入障壁が下がって急激に市場が拡大する一方で、セキュリティ面で未整備なデバイスを踏み台にして世界最大規模のDDoS攻撃が発生したのも記憶に新しいところです。
常松
自分の中ではまだ、デバイスにネットが載ってる、くらいのイメージが強いです。デバイスがみんな繋がってハッピーという単純な話ではないと思いますが、普段ネットワーク側に視点を置いている人間としては、セキュリティ面は非常に気になりますね。
──柴田さんどうですか。
柴田
積極的に使いたいと思ってはいるものの、日本のプラットフォームがなかなか進展しないのが気になります。Google HomeとかAmazon Echoとか、国内だとまだ「なにそれ?」という感じですよね。各メーカーによって異なるプラットフォームや、技適マーク(特定無線設備の技術基準適合証明等を受けた設備に表示するマーク)などの認証制度がハードルになっている面もあると思いますが、医療分野などを中心に動きがあるようなので、その中から面白いものが出てくるといいなと願っています。
──カオスな状況の中で、キープレイヤーが登場して起こるのがイノベーションだと思うんですが、日本ではまだカオスが続いている状態で、まずはスマホとウェアラブルデバイスでなにかを実現していくのが現実的なのかもしれませんね。
ナカジ
既に生活面で革命が起きている部分もあるとは思うんですが、ビジネスに生かそうとするといろいろ難しいところがあって、僕の中でもどうやって生かしたらいいのかまだわからないですね。ドローンで荷物を届けるとか、そういうのしか浮かばないです。それも海外ではもう実現しそうだし…。
──今の世の中で普通に生活していても、特に不便で困っていることがあるわけではないのが現状です。あるのが当たり前になっているものにもう一度フォーカスしてみるとか、考え方を変える必要があるかもしれません。

【第4位:コンテナ技術】

──4位はコンテナ技術です。2016年に印象に残ったランキングでも5位に入っていました。コメントを大きく分けると、トピックとしては3つあって、ひとつはDocker。もうひとつはペパボのudzuraさんが開発しているhaconiwa。あとは、それらのコンテナをどうオーケストレーションするかという部分。このあたりは、興味があると仰っていた柴田さんにお伺いしましょう。
柴田
今後やりたいこととしては、GoのウェブプロセスやRubyの簡単な何かを起動させるような小さなものを大量に並べてスケールさせることができて、可用性が高まるものについてはコンテナの技術を使いたいなと思っています。コンテナ技術はAWSのECSやGCPのGKEを使えば運用に苦労することなくリーズナブルに実現することができます。ただし、ペパボでは「Nyah」があるので、その上でコンテナを動かすための基盤を作りたいと思ってます。現在は、試験的に社内でDockerがオフィシャルに提供しているオーケストレーションのソフトウェアDocker Swarmを使ってクラスターは構築して動かしているものの、安定しているとは言えないなあという感じです。2017年の課題は、スケジューリング、台数の増加に伴う転送量の増加をどう効率化しつつ、プロダクションの環境でコンテナ技術を採用したい、というところです。
──「minne」の露出強化に伴うスケールアウトについてはノウハウが溜まってきたので、今後はさらに横展開させたり、違うアーキテクチャを考えたりすることで速度が改善することもあるかもしれませんね。
──ペパボではhaconiwaというコンテナの基盤に使えるソフトウェアも開発しています。これは、udzuraさんがコンテナ技術にのめり込むあまり2016年の春頃から独自に作り始めたもので、あっという間に一通りの実装ができたところです。2017年からはは実際に使い始めることができそうな気配なので、楽しみですね。

【第3位:VR・AR】

──第3位はVR・ARです。2016年はOculus RiftやPlayStation VRが発売され、いよいよ実際にコンシューマーがVR体験できるようになった一年でしたが、2017年以降はどうなると思いますか?
ナカジ
技術者としてよりも、完全にコンシューマーとして楽しめそうだなあとつい思っちゃいますね。遊んでみたい。
──PlayStation VRを購入された柴田さん、感想はどうですか?
柴田
ガジェット大好きなので、PlayStation VRも例に漏れず購入しました!よくできています。個人的な感想になってしまうんですが、視力が低いのでメガネを掛けないとバーチャル空間がぼやけてしまうのが難点ですね。
常松
柴田さん、コンタクトレンズしてるんじゃないですか?
柴田
日常生活には支障がないので、ほぼ裸眼なんです。一方、VRは完全に焦点を合わせる必要があるのでメガネが必須なんですよ。バイザーの中でメガネがずれたときが大変で…。一度バイザーを脱いでメガネを掛け直して、またバイザーを装着して、メガネがずれたら脱いで…というの、ものすごくだるい!あとPlayStation VRはHDMIの映像を両目に1個ずつ投影するっていう仕組みなんです。なのでバイザーに太いHDMIケーブルが2本ついていて、これがすごく重いんです。装着してる間は周りが見えないので、気づくとケーブルが身体に巻き付いていたりして…。
常松
装着しながら動くと、そうなっちゃうんですね。
柴田
そう。遊んでる途中に引っかかって転ぶ危険も大いにあり得るなという感想なので、もうちょっと改善を期待したいところです。
──デバイスも過渡期だし、コンテンツももっと増えてほしいですね。
柴田
そうですね。個人的には、VRよりもARのほうに興味があります。Pokémon GOとか、カメラをかざすとテキストを翻訳してくれるGoogle翻訳とか。Google Glassはペンディングになってしまいましたが、小さい頃に夢見たドラゴンボールのスカウターのようなデバイスが出てくる可能性もまだあると思っています。買い物をするときに最安値がわかるとか、野菜の産地がわかるとか、日常生活に普及する可能性があるのはARのほうかなって思います。
──没入感を生み出せるほどのコンテンツを作らないといけないハードルと、今の生活を便利に拡張するための技術を比べると、後者のほうが伸びていくのかもしれませんね。

【第2位:フィンテック】

──第2位にランクインしたのはフィンテック。2016年に印象に残った技術第5位にもランクインしていました。ここでいう「フィンテック」は、ブロックチェーン技術や電子決済も含む広い意味だと思っていただければ。アンケートでは、Apple Payを挙げるコメントが多いですね。中でも「minne」がApple Payのローンチパートナーとして選ばれて、先駆けてApple Pay対応したのも大きなニュースでした。担当したナカジさん、いかがですか?
ナカジ
「minne」がApple Payに着手し始めたときは、Appleから提供されたAPIに準じて実装していたので、開発中に裏側の仕組みを意識することは、実はなかったんです。クレジットカードを持ち歩かなくても簡単に決済できる点はもちろんなんですが、Appleは安全な通信手段を提供しているのであって、カード情報は管理しないと明確に切り分けたところが興味深いなと思います。そういう意味でも、決済の仕組みがガラリと変わったなという印象です。
──ユーザー体験はどれくらい変わったと思いますか?
ナカジ
時間がないときによくネットで出前を注文するんですが、Apple Payに対応しているサービスを使うと個人情報を入力しなくてもよくて、デバイスに登録している情報を使えるので便利だし、とてもいい体験でした。
──サーバーサイドの開発は三宅さんたちを中心に進めていたと聞きました。なにか印象的な出来事はありましたか?
三宅
開発自体は淡々と進めていました。一番楽しいなって思ったのが、MacのSafariのブラウザでモバイル相当のことができること。JavaScriptを使ってペイメントシートを表示させて、iPhoneでTouch IDを使うというやり方で決済できるようにしています。一般的には越えられない壁があると思われていた部分をAppleが乗り越えてきたのは面白かったですね。
──ペパボのフィンテックに関する話題は、「minne」のApple Pay対応が大きかったんですが、実は去年の座談会で、ブロックチェーンが来ますという話をしていたんですよ。
柴田
そういえば話しましたね。突然話題に出てきて「え?」って空気になりましたが、実際にトレンドになりましたねえ。
──プラットフォームができつつあったり、大手金融機関がブロックチェーンをバックエンドにした電子通貨を発表したり、社会基盤としての兆しが見え始めた一年だったと思います。引き続き、2017年に面白い動きが出てくるような気がします。

【第1位:機械学習】

──2016年に気になったランキングに続き、2017年に注目したいランキング1位にも機械学習がランクインしました。ここでは人工知能やディープラーニングなど、細かい話題をひっくるめて機械学習とラベリングしています。各社がbotのAPIを公開したり、具体的な利用事例が増えた一年でした。「minne」で機械学習にかかわる取り組みを進めている三宅さんにお話を伺いたいのですが。
三宅
「minne」ではレコメンデーションに機械学習を活かそうと取り組んでいるんですが、今後やりたいこととしては画像情報からレコメンデーションのネタを取り込む技術を実装したいということ、もうひとつは情報を即時的に取り出したいということです。後者については現在、時間のかかる機械学習とバッチ処理的な手法を組み合わせてレコメンデーションの情報を取り出しているところなので、もっとユーザーのアクションに対してすぐにレスポンスを返せるレコメンデーションにしたいと思っています。
──2017年はその2点を目標にやっていくと。
三宅
そうですね。2016年はTensorFlowChainerのような機械学習ライブラリが一般的になった一年でした。つまりそれは、単純にライブラリに即した機械学習をやっていても勝てないということが示されたということなのかなという気もしています。例えばAlphaGoは膨大な棋譜を学習した畳み込みニューラルネットの精度を向上させるために、モンテカルロ木探索や強化学習といったやり方を採用しています。それらひとつひとつは以前からあった技術です。もちろんTensorFlowやChainerを活用すれば、それらを組み合わせること自体はできると思います。しかしそれで十分というわけではなく、AlphaGoを再現しようと思ったら、人もCPUも膨大なリソースが必要になるわけです。実はそれって容易に達成できないところなので、ライブラリとしては公開してやっても全然いいよみたいなところに受け取ったんですね。なので、2017年はライブラリを使うだけじゃなくて、しっかり勉強していかないといけないと思っています。
──ペパボとしても、これまでのサービス運営で蓄積したデータリソースを有効に活用して、より高い価値をユーザーに提供できるようにしたいという話が進んでいますね。また、2016年7月に設立したペパボ研究所では、「なめらかなシステム」というものを実現しようと、2017年も引き続き取り組んでいく予定です。詳しくはペパボ研究所のブログエントリを読んでもらいたいなと思います。
──2016年と2017年の技術トピックについてひととおりご紹介してきましたが、最後にみなさんの感想をお聞かせください。では、ナカジさん。
ナカジ
割とインフラ寄りの話題が多かった気がして、モバイル分野担当としては肩身が狭かったです(笑)。ただ機械学習などはモバイルエンジニアも避けては通れないトピックなので、2017年も引き続き僕たちのできるところで、とにかくやっていこうという感じです。
──ユーザー体験を作るという意味では、逆にどの話題もモバイルを避けては通れないとも言えますね。では次に、常松さん。
常松
既存の技術もそうですが、より便利でスケーラブルな仕組みを作るというところにフォーカスしていく必要があると感じました。コンテナ技術に関しても、機械学習についても、大量のリソースを効率的に集めて、自動化して機械に任せられるところは任せて、という仕組みや大枠づくりに、2017年は注力していきたいです。
──ありがとうございます。三宅さん、どうですか。
三宅
こうやってみんなで技術について長時間話す機会ってあんまりないので、単純に楽しかったです。もっとやりましょうよ。
(※)編集者注:収録は2時間にわたって行われました
一同
(笑)
三宅
機械学習に限らず、トレンドが全般的に高度で専門的な分野に広がっている気がするので、僕も精進を怠らずにやっていきたいと思いました。
──ありがとうございます。では最後に、柴田さん。
柴田
僕もこういう改まった場所でじっくり話す機会はないので、2017年は社内Podcastみたいなのをやりましょうか。実は今回、5位以上のネタは全然追いかけられてなくて(笑)。ウェブ上でテキストを眺めて読んで、理解したなって思って終わってしまっていて、手を動かす部分が圧倒的に追いついてないので、2017年は勉強して追いつかないといけないなと齢35にして思うところです。あとね、ひとつ言っておきたいのは、今回OpenStackが忘れられてたことなんですよ。
常松
そうなんですよ!全然票が入ってなくてすごく悲しかった!
柴田
まあきっと、よく悪くも目立たなかったんだろうな、平和だったんだろうなと思っています。僕の実力不足みたいなとこもあると思うんですけど…。
──いやいや、みんなすごく使ってますし、なかったらサービス動いてませんからね。
柴田
そうなんですよ。強引に締めに持っていくと、OpenStackにもたくさんコンポーネントができているので、2017年はちゃんと動くように整備していきたいと思っているところです。
──2017年も盛りだくさんの一年になりそうですね。ありがとうございました!

番外編:ランキング一覧

《2016年のトピックベスト10》
第1位 機械学習
第2位 VR
第3位 mruby
第4位 コンテナ技術
第4位 フィンテック
第6位 IoT
第7位 Ruby
第8位 Elixir
第9位 Swift
第10位 Microsoft
《2017年に注目するトピックベスト10》
第1位 機械学習
第2位 フィンテック
第3位 VR
第4位 コンテナ技術
第5位 IoT
第6位 Elixir
第7位 Swift
第8位 Ruby
第8位 Rust
第10位 PHP7


〜おわり〜