デザイナー評価制度の話

第1話
デザイナー職位制度とは
第2話
私、シニアデザイナーになる!
第3話
飛び立て羽ばたけデザイナー

デザイナー評価制度の話

第1話  デザイナー職位制度とは
第2話  私、シニアデザイナーになる!
第3話  飛び立て羽ばたけデザイナー

今回の登場人物

五十島 啓人
取締役兼経営戦略部長。人事制度管掌役員として、評価制度改革に乗り出す。最近の趣味は懸垂。

岡田 裕介(デミ)
ウェブから紙まで縦横無尽に飛び回り、手斧を振り回すシニアデザイナー。職位制度・評価制度の策定に企画当初から参画。

佐藤 咲(しょうちゃん)
2011年新卒入社の初代シニアデザイナー。安定感と優しさを備えたデザインが定評。ねことコーヒーが好き。

エンジニアから導入が始まったGMOペパボの新しい評価制度。2015年からは、新たにデザイナー評価制度がスタートしました。制度導入に携わった五十島取締役をモデレーターに、現場の声を取り入れながら制度のブラッシュアップに尽力したデザイナーデミ、制度を実際に活用してシニアデザイナーに昇格したしょうちゃんがそれぞれの実感を語り合いました。
五十島
今日はシニアデザイナー2名にお時間をいただいて、ペパボのデザイナー評価制度と職位制度についてお話を伺いたいと思います。まず、デザイナー職位制度ってなんなんでしょうか?
デミ
デザイナー職位制度は、社内のデザイナーの育成やデザイン力の底上げなど、担当する部署やサービスだけではなく、会社全体のデザイン力を底上げすることを目的として、2015年に新制度として発足しました。職位はデザイナー、シニアデザイナー、プリンシパルデザイナーとなっています。年2回立候補できる機会があり、実績に加えて、なぜ自分がその職位にふさわしいのかということを記載した自己推薦書を社内のGitHubのプルリクエストで提出してもらいます。デザイナーであれば誰でも立候補できます。
五十島
どんな人がシニアデザイナーになれるんですか。
デミ
現在シニアデザイナーになっている人は、ある程度の経験があって、他のデザイナーにいい影響を与えながら力を引き出してあげられる人です。ある分野に対する技術が他のデザイナーと比べて突出しているとか、アウトプットのクオリティが高いということだけではなくて、そのスキルを生かして他のデザイナーに的確な助言をし、成長を助けてあげられるような人という感じです。社内外問わず、自分の能力やスキルに関してアウトプットができている方ですね。
五十島
どういった背景でデザイナー職位制度を導入することになったんですか?
デミ
以前までデザイナー職は、長年いるベテランの方も新卒で入ってきた方も同じ3段階の等級で評価されていたため、頑張って評価を上げても頭打ちになってしまい、キャリアプランが見えにくいという問題がありました。あともう一つ、デザイナーの評価者がデザイナーではなく事業部のマネージャーのみだったため、自分のデザイナーとしての力量が本当に評価されているのかわからない、納得感が低いという課題もありました。その状況を打破するために、まずはデザイナーによるデザイナーのための評価をしたいと考えたんです。そのためにはデザイナーを評価するデザイナーが必要になります。そこでもう一つ、これまでより上の等級を作って、その等級の人達に評価してもらおうと思いました。
五十島
現場のデザイナーのキャリアに対する不安が、新制度発足の背景にあったんですね。同時に組織としても、2014年からエンジニアは新しい評価制度と職位制度が動き出して(※)、会社のさらなる成長のために次はデザイナーの制度を刷新する時期だなという気運もありました。
(※) エンジニア評価制度についてのインタビューはこちら
デミ
デザイナーの評価制度を作ろうという動きは随分前から何度も何度も出ては消えていたのですが、エンジニアの評価制度がしっかり固まったことでよりイメージが具体的になったというのはあると思います。
五十島
制度を作ろうという動きがなかなかうまくいかなかった背景はどこにあったと思われますか。
デミ
デザイナーの評価軸をどこに置くかが定まらなかったことが原因なんじゃないでしょうか。事業部長やマネージャーが評価者になると、必然的に定量的目標に軸足が置かれてしまう。もちろんその視点は大変重要なものではあるんですが、そこでデザイナーが果たした役割や、デザイナーの能力によってどういうことが起きたのかということは評価が難しかったのが事実です。さらに、そのデザイナーが作ったアウトプットや行動、周囲へコメントするときに、「これはいいね」とか「あんまりだね」の、特に「あんまりだね」の線引きがすごく難しい。そこを委ねられる評価者としてのデザイナーを置こうということが、エンジニア評価制度の前例でやっとできるようになってきたんだと思います。
五十島
実際にプロジェクトを発足させてから、評価制度と職位制度を試験的に導入するまでの間で、デミさんが大変だったことってありますか。
デミ
大変だったのは、これまでより上の等級の要件を決めることですね。今までにない等級を作っていかなくてはいけないので、どういう人がふさわしいかきちんと考えて決めないといけないと思っていました。あとはなにより、どうやってデザイナーではない評価者たちにその評価軸を理解していただくかというところが一番大変でした。プロジェクトメンバーみんなで言い合い、やり合い、いろいろ喧々諤々やりましたね。
五十島
確かに、メンバー全員がかなり骨を折ったなというのはありますね。
デミ
細かい評価の基準に関しては、実際に運用しながら固めていくしかないかなって感じはしますね。
五十島
僕が人事管掌の役員として、更に言うとデザイナーではない評価者の視点で話し合いに参加して苦慮したのは、手段がゴール化しないようにするということ。つまり、目標というのは会社と個人の成長のために達成されるもので、評価されることがゴールになってはいけないということでした。評価者にとってはデミさんが仰ったように目線を変えなければならないのはもちろん、大きな悩みが3つあったんですよね。1つ目はデザイナーが作ったデザインに対して説明がなく、プロセスが共有されてないために表面的なデザインチェックしか行われていないこと。2つ目は目的が明確でないまま施策がおこなわれているために適切な効果測定ができないとこと。3つ目はチームを越えて仕事のやり方やノウハウが共有されないこと。これは評価者とデザイナー双方にとっての課題でもありました。この悩みとキャリアプランの課題をあわせて解決させようという気持ちで制度の策定に取り掛かり始めたと思います。
デミ
確かにそうです。
五十島
最初は試しに、それぞれデザイナーがどういう考えでデザインして成果物に落とし込んでいるのかを共有するためにissueの見える化をやってみたんですよね。
デミ
なかなかうまくいかなかったですよね(笑)。自分のやったことをみんなに見えるようにしようって声をかけたんですけど、それをやることによってどういう結果が生まれるのかイメージできない上に、今の仕事にそのプロセスをプラスしないといけないのは単純に負担に思われる部分もあって、結果的に頓挫しましたね。
五十島
結局、何のためにやるかっていうのがなかなか見えなかったっていうことですよね。最終的には全デザイナーの1/3にしか効果を感じてもらえなかったです。ただ、こういった試行錯誤を繰り返すことで、制度を作ろうとする側の目線は確実に上がっていったと思います。プロジェクトのスタート時にはみんな個人的な感想や意見を述べていた感じだったのが、組織や制度全体を見る目線に変わっていった気がします。そのプロセスがあったからこそ、今の職位制度や評価制度がうまく回っているのかなという気はしますね。
デミ
ありがとうございます。


~第2話へつづく~