エンジニア評価制度の話

第1話
エンジニア評価制度とは
第2話
エンジニア評価制度の運用について

エンジニア評価制度の話

第1話  エンジニア評価制度とは
第2話  エンジニア評価制度の運用について

今回の登場人物

柴田 博志

柴田 博志
技術基盤チームのチーフエンジニア。あんちぽらと執筆・編集に携わった『スクラム実践入門 ── 成果を生み出すアジャイルな開発プロセス』が絶賛発売中。

栗林 健太郎
技術基盤とインフラの2チームを率いるCTO。自らが就任したCTOの正式名称が本当に「Chief Technology Officer」なのかどうか思案を巡らせる日々。

吉田真世登
2012年入社の新卒2期生。30days Album担当。2014年、職位制度を活用した新卒初のシニアエンジニアに昇格。

貝瀬 美奈子
採用から労務、人事制度まで幅広く手がける人材開発グループリーダー。エンジニア評価制度の策定と運用を強力にバックアップしている、頼もしい存在。

ペパボが独自のエンジニア評価制度を作り上げたのは、2014年。約1年たった今も、幾度のアップデートを繰り返しながらしっかりと運用されています。今回は、この評価制度について振り返りつつ、現在のエンジニアの採用活動や今後の課題、さらには展望までを、チーフエンジニア柴田とともに制定に尽力したCTOあんちぽ、人事の貝瀬、そしてこの評価制度で実際に昇格した新卒2期生のエンジニアまよとを交えて語ってもらいました。

数字で見るエンジニア

柴田
今日はペパボのエンジニア評価制度というものについて話をしていきましょう。まず、人事の貝瀬さんに、ペパボのエンジニアがどれくらいいるのかお聞きしたく。
貝瀬
2014年12月末時点で、アルバイトを含めて社員数は246名いるんですけど、そのうちの76人がエンジニアです。
柴田
全社員の3分の1ぐらいがエンジニアであると。
貝瀬
そうですね。ペパボでは大きくはホスティング事業部、EC事業部、本社事業部に分かれています。その下に、サービスごとにグループができていて、マネージャーを始めディレクター、デザイナー、エンジニア、CSなどの職種の人達がワンセットで所属しています。
柴田
なるほど、職種別に組織が分かれているわけではないんですね。勤務時間についてはどうですか?
貝瀬
通常、東京は10時から19時。福岡は9時から18時という勤務時間です。一方で、インフラ、シニアはフレックスタイム制で、アドバンスド・シニアは裁量労働制になっています。フレックス制に関しては、通常の勤務時間のうち、最低4時間は勤務しましょう、そして月の所定労働時間はクリアしましょうっていう、この2点をクリアしていれば問題ないというかたちの勤務体系になっています。コアタイムは特に設けていません。
あんちぽ
残業についてはどんな感じですか?
貝瀬
一人あたりの月間平均残業時間は大体17時間。残業時間は一般的な平均から見ても少ないほうだと思います。
あんちぽ
仕事もプライベートも、めりはりつけてやってるって感じですかね。
貝瀬
そうですね。有給取得も会社で推奨していますし、すごくいい社風が作られていると思います。

ペパボのエンジニアとは

柴田
ペパボのエンジニアと一口に言っても、いくつか種類がわかれているようですね。あんちぽさんに聞きましょう。
あんちぽ
まずは、「ウェブアプリケーションエンジニア」。彼らはPHPやRubyを使ってサーバーサイドの開発をやったり、あるいはフロントエンドを構成するJavaScriptを書いたりします。あとは、iOSやAndroid向けのアプリの開発を専門とする「モバイルアプリケーションエンジニア」。そして、ペパボが提供しているさまざまなサービスの土台であるサーバーの構築や運用などといった主に裏側を支える役割の「インフラエンジニア」ですね。ペパボのエンジニアは大きくこの3タイプに分けられると思います。
柴田
例えば、ある人が「僕は明日からインフラエンジニアになります!」みたいな感じでなれるものなんですかね?
あんちぽ
なれます、やる気があれば。
一同
(笑)
あんちぽ
それぞれ専門性があるので役割分担はありますが、僕らはウェブサービスを作っているので、「自分はウェブアプリケーションの担当なんでインフラのことは知りません」とか、「インフラなんでアプリケーション開発のことはわかりません」みたいなことだと困ってしまいます。そこは積極的に、お互いのことを極力わかるようになりましょうっていう姿勢を推奨していますね。
柴田
その一方で、その事業部制の中に新しく今年から「技術部」というちょっと台風の目っぽい謎の部署ができたんですよね。その部長になったあんちぽさんに、技術部というものはいったい何を目指して作られた部署なのか、今後どういう動き方をするのかというあたりを説明していただきましょうか。
あんちぽ
はい。事業部制は、お客様に対してスピーディーに動けるメリットがある一方、縦割りになってしまって動きが非効率になる恐れもあります。そこに横断的に動けるメンバーを配置することで、もう少し大きな動きができるんじゃないかと思って作ったのが、技術部っていう部署と、その下のインフラグループです。エンジニアの中でも横断的な動きをしやすいインフラエンジニアの皆さんを集めて、いろんなサービスを担当するという形にしています。
柴田
たとえば、同じようなウェブアプリを作ろうとしているのに、違うサーバー構成にしてしまうみたいな問題を解決するというようなところを目的としていると。
あんちぽ
そういうことです。もともと福岡支社ではこの体制をとっていたので、今回は東京本社の体制を整えた感じです。そもそも技術基盤チームは、特定のサービスに密着するというより幅広く会社全体を見るチームなので、それとは別に、サービスに密着した仕事をする人たちが集まる部署として技術部のインフラグループを作りました。お客様に対して安定したサービスを提供し続けていくために、インフラの基盤をもっとよくしていくぞという思いもあります。

エンジニア評価制度について

柴田
次に評価制度について、詳しく話をしていきたいんですが、まずはペパボの基本的な評価制度について貝瀬さんから簡単に説明をお願いします。
貝瀬
はい。評価は年に2回、上期と下期に分けて行われます。目標を設定する際は、等級に見合った業務内容をクリアできているかという基礎的な部分に加え、チャレンジしたい業務目標を立てます。これを元に面談でマネージャーに評価してもらい、評価が高ければ昇給幅が上がる仕組みを取っています。この評価制度は、全社員の等級と設定した目標、それに対する評価やフィードバックがすべて共有されているので、誰かの目標を参考にしたりしながら、自分の目指す業務内容や評価に向かって目標を立てて実行していける仕組みを作っています。
柴田
つまり、評価者は、自分の所属する部署のマネージャーであると。一方でエンジニア評価制度は、ちょっと違ってるんですよね。
あんちぽ
はい。半期ごとの評価制度に関しては、エンジニアにも似たような制度があります。技術基盤チームのメンバーがそれぞれ手分けして、全エンジニアに対して面談を行い、それをもとにCTOである僕が一次評価を決定して、マネージャーの皆さんに二次評価をしてもらう形をとっています。事業的な視点に加えて技術的な視点が入るので、より適正な評価ができるようになったと思っています。評価の観点は、ペパボの大切にしてほしい3つのことに準じています。スタッフに大切にしてほしいことは、すなわちエンジニアにとっても大切にしてほしいことだと思っているので。
柴田
この評価制度は2014年から実施されていますが、まよとは技術基盤チームと面談するようになって、これまでと比べて変わったなと感じるところはありますか?
まよと
自分がやったことを、振り返って人に話せる機会を持つことができるようになったことがとてもよいと思います。人と話すことで、忘れていた自分の実績を思い出せたりするので。あとは、自分がやったことに対して、技術的な視点で技術基盤チームの人達に直接コメントやアドバイスをしてもらえるのも、すごく嬉しいポイントです。エンジニアとして、どうすれば次のステップを目指せるのかを見つけられる場でもあるのではないでしょうか。
柴田
同じ職種ならではの話ができるのがいいんですね。一方で、評価する側のあんちぽさんは、この制度が始まってから変化を感じる部分はありますか?
あんちぽ
エンジニア全員と、1人ずつ1時間近くかけてお話をする機会ができたことですね。僕は評価というのは、評価をすることそのものが最終目的ではなくて、各人のマインドを高める手段だと思っています。エンジニアならではの目標設定や、目標に向かったアウトプットの出し方の支援をするのも技術基盤チームの役割のひとつと考えていたので、この評価制度を通じて実際にかかわれるようになれたのが一番大きいと思ってますね。結果として、エンジニアの皆さんの仕事のアウトプットもしやすくなったと思ってます。
柴田
僕も、それをすごく感じてます。以前、「今うちにはモバイルエンジニアが足りていなくて、モバイルの最新の動きについてのキャッチアップも十分とはいえないので、それをふまえてこういうチャレンジをやってもらいたいんです」という話をモバイルエンジニアの人たちに話したことがあるんですけど、すごくポジティブな反応をもらったことがあって。それを期に、面談では、会社の現状や、エンジニアとして望むことをなどをしっかり伝えることを心がけてます。
柴田
貝瀬さんのほうで、エンジニアだけ他の職種と違う評価制度になって、大変になったと感じるところはありますか?
貝瀬
現在、拠点は東京と福岡にあって、技術基盤エンジニアは東京に勤務している人のほうが多いので、出張スケジュールを組むのが少し大変になってきたくらいです。ただ、エンジニアの皆さんのモチベーションが高まったメリットはとても大きいので、制度として成熟させるために、今後は、エンジニアが増えていくことを視野に入れて進め方を考えないといけないなと思っています。
柴田
人事のみなさんのご協力あっての制度なので、そう感じていただけるのは嬉しいですね。まよとは、この制度について「ここが面倒だな〜」と思った点はある?
まよと
特には感じていないです。強いて言えば、1ヶ月ごとに自分がやった実績の記録作業が、仕事が忙しいときにちょっと面倒だと感じることはたまにあります。でも、この作業があとから自分自身を評価するときにとても役立つので、結果的にすごくいいなと思ってます。
貝瀬
エンジニアの評価資料は、誰でもコメントすることができるのがいいですよね。周りの人たちがフォローしたり応援したりできる。みんながその人をどう見てるのかっていうことが客観的に見えるのも、非常にいい仕組みだなって思います。
あんちぽ
まよとも、結構積極的にコメントしてたよね。
まよと
そうですね。同期エンジニアに「普段の仕事ぶり、ちゃんと見てるぞ」って伝えたりしています。あとはエンジニアだけじゃなくて、別の職種の皆さんからコメントをもらうことがあって、それも励みになりますね。
柴田
同僚から「こういうこと助けてくれてありがとう」みたいなコメントが結構届く。あれはいいですよね。
貝瀬
そうですね。ほっこりしますね、なんか見てて。
柴田
面と向かってはなかなか、ありがとうって言えないから・・・恥ずかしくて。(笑)

職位制度について

柴田
エンジニアの職位制度と呼んでるものがあるんですが、それについてもあんちぽさんからお願いします。
あんちぽ
ペパボの場合、3等級まではエンジニアもそれ以外の職種も共通の仕組みがあります。エンジニアのみ、その仕組みの上にシニアエンジニア、アドバンスド・シニアエンジニア、チーフエンジニア、そして僕が今就いている執行役員CTO、というキャリアパスが用意されています。職位を上げるには、自分で立候補して、自己推薦ドキュメントを書いて提出してもらいます。それをもとに技術基盤チームで話し合って、昇格してもらうかどうか判断しています。
柴田
今、シニア、アドバンスド・シニアって何人ぐらいいるんですか?
貝瀬
今だとシニアは15人、アドバンスド・シニアは3人います。(※2015年3月末時点)
柴田
エンジニア全体の25%ぐらいが職位制度に基づいて評価されているという状況なんですね。で、去年この職位制度に、ある象徴的な出来事が起きたと。
あんちぽ
そう、2012年に新卒2期生として入社したエンジニアのまよとが、新卒で初めてシニアに昇格した。
柴田
新卒採用で、いわゆる業界経験がない人が、挑戦して見事職位昇格を成し遂げた。エンジニアとしてある程度能力が高いと評価されたということなんですよね。
あんちぽ
新しい人がチャレンジして上に上がっていく道筋がついたと思ってます。
柴田
まよとは、そもそも立候補しようと思ったきっかけってなんだったんですか?
まよと
まず、給料を上げたくて。
一同
(笑)
柴田
いいっすね!
まよと
自分が頑張ってるぞっていうことを示したかったんです。シニアとかアドバンスド・シニアっていうのは、ペパボのエンジニアにとっては明確な目標なので。昨年立候補して、実際にシニアになれたわけたなんですけど、実はその前の年にも立候補していて、そこでは通過せずにシニアにはなれなかったんです。けど、そこでいただいた評価を元に、そのあと1年間かけて努力して、今の時点だったらシニアになれるんじゃないかと自分で判断して、立候補しました。
柴田
努力の過程の中で、特に気にかけていたこととか、こういう暮らし方を心がけてたみたいな、そういうのってあるんですか?
まよと
技術の勉強はもちろん、特に、他の人がやってないところを積極的に取り入れて、意識的に差別化を図っていました。あとは、シニアやアドバンスド・シニアの人たちがやっていることを真似したり。
柴田
実際にシニアになって半年たったと思うんですけど、何か変わりました?
まよと
責任感というか、意識的なところが変わったような気はしています。もうちょっと会社に貢献したいと思うようになりました。今までは自分の担当するサービスだけを見てコミットしてたんですけど、自分のサービス以外も幅広く見るようになりました。
あんちぽ
シニア以上の職位には、基本的には職位にかかわらず質の高い貢献ができる人に昇格してもらっているという前提があります。その一方で、シニアとなったからには、ちゃんと求められる役割を果たしてくださいというプレッシャーを与えることもありますから、それを受けて意識が変わるというのは確かにあると思います。
柴田
このエンジニアの職位制度の導入を経て、他の職種での変化はみられますか?
貝瀬
エンジニア職位制度をお手本にして、デザイナーにも導入しようという動きを始めています。専門職としてキャリアアップするか、管理職としてキャリアアップするかという具体的な選択肢を持てるようになってくると、自分の働き方やモチベーション、会社に対する思い入れの深さにもつながってくるということがわかったので、この制度は非常にいいきっかけになったと感じています。
柴田
ほかの職種についても似たような制度を取り入れてはどうかみたいな動きがあっちこっちで起き始めているっていう感じなんですね。


~第2話へつづく~
  • 1
  • 2