81世代エンジニアの話

第1話
エンジニアの人生設計
第2話
35歳引退説
第3話
若者に向けた言葉

81世代エンジニアの話

第1話  エンジニアの人生設計
第2話  35歳引退説
第3話  若者に向けた言葉

今回の登場人物

柴田 博志(hsbt)
技術基盤チームのチーフエンジニア。Ruby コミッタ。Asakusa.rbの運営やRails Girls Tokyoのコーチを努めるなど、Rubyの啓蒙活動を精力的にこなす。

常松伸哉(つねさま)
ヘテムルチームのシニアエンジニア。エンジニア界隈きってのイケメン。ペパボの要のひとつである「heteml」の根幹を支える。最近のマイブームはServerspecでのインフラテストとカレー。

土谷 光(つっちー)
ブクログパブーを一手に引き受けるエンジニア。社外での製作活動も活発で、「STORYBOARDS」「Casto」「REMP」など、多くのサービスを運営しており、現在は「triph」のリリースも控える。

おっさんエンジニアが考える、後輩との接し方

hsbt
僕が今悩んでること、考えてることはですね…ここ半年くらいは、HRT(ハート)を意識するようにしています。Hは謙虚(humility)、Rが尊重(respect)、Tが信頼(trust)。僕20代の頃はすごく棘々しかったんで(笑)。
常松
オラオラ…?
hsbt
はい(笑)。とにかくストレートにモノを言ってて、しかも理詰めで言い負かしちゃうんですよ。なのでみんなシュンとなってしまう、というのが割と多かったんですね。エンジニアリングにおいても社内制度においても、データとかも出した上で「これをやっても意味がないでしょ」みたいなことを言ったり。
常松
あー…でも言っていることは正しいわけですね(笑)。
hsbt
そう!でも今は立場的にも昔より影響力があるので、たとえば「Rubyでこういうコード書いちゃダメだ!」とか名指しで言うと晒しあげみたいになっちゃうし、書いた人もしょんぼりしちゃうし…。ここ半年くらい、使う言葉と情報共有のやり方を意識して気をつけてます。
土谷
結構最近(笑)。
常松
柴田さん今の立場になって2年くらいたちますよね(笑)。
hsbt
だから、去年まではだいぶやんちゃでした!
常松
何かを推進してく時ってそういうパワーは必要だと思いますけどね。後輩を育てたりとか、ある程度の厳しさはいると思う。
hsbt
そうそう、やはり時と場合だとは思っていて。セキュリティの問題とか社内インシデント的な場面では「それはだめだ!落ち着け!」みたいな指揮を取ることはありますね、もちろん後からフォローは必要ですが。ただ、そうじゃない場面では「もうちょっといい方法があると思うけどな〜(ヒント)」みたいな言い方とか、相手にも考えてもらうための工夫をするようになりました。
常松
それ、わかります。
hsbt
とはいえ、厳しい部分も必要だし。さっき話したけれどコードで解決する、という時とか「これはだめでしょ、こっちのほうが圧倒的に早いでしょ」というのをコードで示すというのも1つの手段とも思うんですよね。そのふたつをどうバランスよく組み合わせるのかが難しい。HRTを意識しだした ら、今度は「これだけでいいのか?」ていう悩みがでてきた。
土谷
両立するのが難しい?
hsbt
うーん…両立というより、バランスにおいてかな。完全に5:5で両立したほうがいいのか、それとも7:3がいいのか、とか。0:10はないとおもっているんですけど。自分では、8:2とか2:8がいいのかな、とは思ってるけれど…。常松さんはどうですか?
常松
新卒の人たちが入ってきたりすると、まさに同じようなこと考えてますね。例えば障害の場合なんかだと、さっき柴田さんが言ったようにキッチリ指示を出してやったりするけど、平時の時の教え方はやっぱり難しい。でも、俺はHRTっていう言葉を初めて聞いたけどそういうのを無意識にやっている方なのかも。
土谷
教え方とかって難しいですよね。
常松
なんだろうな。抽象的な質問のされ方をされると、つい「こうやれ」みたいな指示をしちゃうこともあるけど、悩んでる本人もうまく説明できないことはこっちが上手く分解して汲み取って、みたいな先回りは必要かと思っていて。あとは、テンションあがりそうなヒントを出したりとか。
hsbt
じゃあ、若者に向けてのアドバイス、みたいな話が出てきたんで、ここらでいわゆる若者向けのおっさんトークを。若者に伝えたいことってなんでしょう?
常松
一番しんどいテーマですよね〜。
hsbt
何を言っても説教臭くなってしまう(笑)
土谷
どうしてもね…。
hsbt
じゃあぼくから(笑)。若い人たちに伝えたいのは、もっと基礎を勉強したほうがいいということかな。大学とかである程度やっている人もいるとは思うんですけど、コンピューターサイエンスとか電子工学をきちんと勉強しておいて、潰しがきくようにしておいた方がいいというのはありますよね。
常松
ああ、それはありますね。
hsbt
だから普遍的な概念とか知識みたいなものをもっと勉強したほうがいいとアドバイスしたいです。いわゆる実務的なこと…プロビジョニングとか、ウェブフレームワークとか、そういうものは昼の業務の時間に学んでいけば良いと思っていて、プライベートの時間ではもっと基礎を大量に勉強したほうがいいと思います。例えば、たまにRubyで浮動小数点を知らない人がいて「小数点の計算結果が違う、バグだ」と言っているのを見かけて周りが「えっ?」となっている場面を見かけたりするので…。
一同
hsbt
20代前半のうちは笑って「いやお前二進法が…」ってネタにできるけど、30代になって分からないって言うのはやっぱり恥ずかしさはあるので、20代ぐらい笑えるうちにちゃんと勉強したほうがいいよ、と。
土谷
ははは。
常松
おっさんトークだ(笑)
hsbt
はい、片足おっさんに突っ込んでますからね(笑)、じゃ、次つっちーどうぞ。
土谷
そうですね…柴田さんがいってるような基礎的な部分の勉強とかは確かにその通りだなあと思います。加えて言うなら、僕はこれまで自分が興味のあることしかやってこなかったんですけど、興味があること、好きなことは24時間やってても辛くないんですよ。いや24時間は辛いかな(笑)?でもずっとやれること、という意味で一つ強みをみつけておくのはおすすめします。
hsbt
時間を忘れておもしろいと思えるプログラミングがあったら、とにかく時間を費やしてみよう、という感じですかね。
土谷
うん、それが一番楽しいのは間違いない。勉強の仕方って、体系的に物事を学ぶタイプの人と、ランダムに学んでいくタイプの人といると思うんですけど、自分のタイプがどちらなのか、というのを見極めた上で学び方を決めていくのも大事だと思います。体系的に学ぶのが得意な人はそれでいいと思うし。僕は典型的な後者なんで一つのことに集中してやってました。
一同
hsbt
図形に例えると、最初から面を上から俯瞰して「あーなるほどね」って全体像を掴む人もいれば、点を打っていくうちにその4つの点をつないでみて、「面になった!全体像わかった!」みたいな人もいますよね。多分つっちーは後者のタイプで「そういうやり方もあるよ」っていうのがアドバイスですね。
土谷
そうですね、体系的に学べないからと言ってあきらめる必要はないです!
hsbt
なるほど、だいぶいい話な感じがするぞ(笑)。という流れで、常松さんの伝えたいことトークは?
常松
俺も割とつっちーと同じような話かな…前職・前々職とかで、自分が何でも屋みたいになっていたことに焦りを感じていた時期があったんですけど、今考えてみるとそういうのがよかったかな、と思ってます。というのは、色々やっていく中で、興味があるものとか、これは!と思うものを見つけられたなという気がしているので。そういう好きなことを見つけてやり続けたことと、今まで幅広くやった経験との組み合わせで今があるなあと。ただ、ある程度数をこなしていくと、「なんとなくふわっとできるようになる」みたいなシチュエーションも出てくると思うんですけど、そこから先に行くときには、ふわっとじゃなくてバシッとした知識が必要になる場面が絶対あると思うので、興味のある分野が出来たら食い散らかさずにしっかり勉強しないと、という。
hsbt
ある程度幅広くレイヤーの上の部分から下の部分まで知ってないと、モノが作れない、とか、エンジニアとして役に立たない、みたいな社会状況になってきてはいるんだけど、ふわっとしたものだけでやると、いざという時にまったく使い物にならないエンジニアになってしまう危険性はあるよね。今、社会で求められているエンジニアの役割と、勉強する領域の話は似たような状況にあるのかな、と。オールラウンダーでありながら、部分部分の深い問題でもしっかり解決できるということが大事ですよね。常松さんがさっき話していたフルスタックの話もそういうことだよね。
常松
フルスタック=便利屋、何でも屋じゃなくて、それこそスペシャリストなんじゃないかと思います。ただ、なんか、フルスタックエンジニア目指してがんばりましょう!ていうものでもないですよね…だから、好きなことやれ!ていう(笑)

30代エンジニア、それぞれの今後勉強したいこと、やってみたいこと

hsbt
じゃ、最後の話題。これから勉強したいことありますか?繰り返しになってもいいし。プログラミングの話で。
土谷
僕はネイティブアプリで面白いものを作るというのを突き詰めてみたい。今までWeb中心でずっとやってきていて、Webってネイティブで簡単にできるようなこともあらゆる工夫をしないと実現できないんですけど、それを実現するのが結構おもしろいな、っていうのはあったんですよね。でも、それってネイティブだと「そんなの2行かけばできるよ」みたいなことだったりするので、Webの限界を知っている人にしかその面白さが伝わらなくて。だから制約の中で楽しむっていうのをもうやめようかな、と思っていて(笑)。
hsbt
ブラウザで見える領域で可能な範囲の話っていうことでは、Gmailを初めて見た時に、「ブラウザ上でこんなにぐりぐり動くの?!」みたいな話ですよね。でも、ネイティブでOS標準の機能を使えばぐりぐり動くのは当然でしょ、みたいな(笑)。
土谷
そうですね、iOSとかネイティブのAPIでのギリギリを探りたいです。どこまで表現が可能なのか、まだ分かってない気がするので。
hsbt
できること/できないこと、表現できること/できないこと、の境目はどの辺にあるのかを探して行く感じ。
土谷
そうですね。
hsbt
なるほど。今、どちらかというと土谷さんは上のレイヤーで、常松さんは下のレイヤーにいると思うんですけど、僕は真ん中にいきたい(笑)。上も下も両方勉強したいなと思っていて、下の方だとシステムのコードレビューのパフォーマンスであるとか、Rubyのオブジェクトのメモリーの使用量をこうすればもっと減らせる、とか。あと、モバイルアプリの最前線とかも勉強して社内に導入したい。社内でも社外でもみんなにメリットを提供できるように工夫や勉強をしたいと思ってますね。
土谷
上から下まで全部ってすごいことですね。見習いたい。
hsbt
いやいや。じゃあ常松さんトリで(笑)。
常松
そうですね、今はもっと自分の専門性を高めたいというのがあるので、OSとかカーネル周りとかの勉強はちゃんとしたいです。あと Infrastructure as Code みたいな便利ツールとかを使わせてもらったりすることが多かったんですけど、そういうのを作る方にシフトしていけるようがんばっていこうかな、と思いますね。近い将来。
hsbt
ふたりとも今日はどうもありがとうございました! 「81世代」同士の赤裸々トーク、いかがでしたでしょうか。 我々の「おっさんトーク」を読んで、もっと話してみたい!と思う人がいたらぜひペパボに応募してみてください(笑)。 それではまた次回のインタビューをお楽しみに。


〜おわり〜