81世代エンジニアの話

第1話
エンジニアの人生設計
第2話
35歳引退説
第3話
若者に向けた言葉

81世代エンジニアの話

第1話  エンジニアの人生設計
第2話  35歳引退説
第3話  若者に向けた言葉

今回の登場人物

柴田 博志(hsbt)
技術基盤チームのチーフエンジニア。Ruby コミッタ。Asakusa.rbの運営やRails Girls Tokyoのコーチを努めるなど、Rubyの啓蒙活動を精力的にこなす。

常松伸哉(つねさま)
ヘテムルチームのシニアエンジニア。エンジニア界隈きってのイケメン。ペパボの要のひとつである「heteml」の根幹を支える。最近のマイブームはServerspecでのインフラテストとカレー。

土谷 光(つっちー)
ブクログパブーを一手に引き受けるエンジニア。社外での製作活動も活発で、「STORYBOARDS」「Casto」「REMP」など、多くのサービスを運営しており、現在は「triph」のリリースも控える。

35歳引退説とかちゃんちゃらおかしいっすよ

hsbt
じゃ、35という数字が出てきたので。35歳定年説(※1)とかって気にしてます?
(※1)35歳定年説 エンジニアの間でまことしやかに囁かれる、35歳をすぎたら思考力が落ちてくるから現場を離れて、マネージメント側に移って仕事をするべき、という説。
常松
俺はあんまり気にしてないですね。ただ、実務の内容が変わるというのは分かるかも。抽象度があがるというか、より俯瞰でものを見るっていうのかな。時には昔自分がやった失敗例とかバッドノウハウをいかんなく発揮して、後進をうまく導いていけるような…。マネージャーとかリーダーにになって仕様決める、という話とかではなく領域が広がるだけかなあと思ってる。
hsbt
わかります。適切な“おっさん力”で問題を解決する、というやつですね(笑)。
土谷
僕も気にならないと言えば嘘になりますけど、35歳になったからって能力がめちゃくちゃ落ちる、っていうのは無いと思ってます。エンジニアは技術を積み重ねていくものだから。 だけど、瞬発力みたいなものは、まあ、あきらめるしかないかなあ(笑)。
hsbt
実感とかってありますか?社内のエンジニアとか若い人達を見てて。
土谷
やー、僕元々トロい方なんで…みんなすごいなっていう感じですね(笑)。
一同
hsbt
人生設計。僕は最近コンピューター以外のことに対しても知識欲がめちゃめちゃ高まっていて。例えば美術史とか会計とか経済学とか。40歳くらいまではプログラミングとかソフトウエア工学のことは当然勉強するけど、それ以外の学生時代授業中ひたすら寝てた、みたいな科目を改めて勉強するのが面白い。建築学を勉強するとソフトウエアアーキテクチャに活かせる!みたいなことに気づいたり。色々繋がっていくし、まだまだ上がるには早いよね(笑)。
一同
常松
35歳引退説とかちゃんちゃらおかしいっすよ…。
hsbt
そう思いますね。あれは完全に転職市場が言ってるだけですよ(笑)。
土谷
35歳以上の人で活躍している人もいっぱいいるし、なおさらそう思いますよね。
常松
うんうん。
hsbt
お、じゃあ35歳以上で憧れる人とか、こうなりたい、みたいな人っています?
常松
うーん…そうだな。あこがれる人…数えきれないくらいいるな。どうしよう…(しばし悩む)。
hsbt
じゃ、何か具体的な夢とか目標でもいいことにしましょうか。何かあります?
常松
目標ですね。インフラだけ、とかアプリだけ、とかそういう区切りは自分のなかであんまり作りたくないと思ってます。茶化すわけではないけど、フルスタックかっこいいなあ、と。
hsbt
仕事の幅を広げていきたい?
常松
そうですね、最近だと問題領域がかわったときに一個のスキルじゃうまくいかないっていう場合が増えてきているなと思っていて。そういう意味でもっとできることを増やしたいな、と。技術分野とかにおいてはそういう感じですね。
hsbt
なるほど。フルスタック。またあとで触れよう。
一同
hsbt
では、土谷さんはどうですか?あこがれる人とか。
土谷
エンジニアだと、最初に入った会社の先輩ですね。けっこう悩みとか聞いてもらっていた方なんですけど。その方の言葉で「ソフトウェアは人間が作っているもので、人間が作っている土台の上でできないものは無い」っていうのに感銘を受けました。一番あこがれつづけている人です。あと、この間『ホドロフスキーのDUNE』っていう映画を見たんですね。映像化は無理だ!と言われていたSF映画を作るチームのドキュメンタリーで、結局映画は頓挫しちゃうんですけど、チームリーダーがとても魅力的で。そういうみんなを盛り上げていく人に憧れるっていうのがあります。エンジニア関係ない…。
一同
hsbt
僕も社内でスクラムのアドバイスしたり、コーチしたりしてますけどそんなイメージ?
土谷
ですね。チームをうまく運用して、全員を楽しくすることをやると、僕も楽しい(笑)。 技術的にスタンダードなスクラムをすべて理解しているわけではないですが、考え方としてはすごく共感できます。
hsbt
なるほど、チーム開発をよくしてその結果いいものが出来ると信じて進めていきたいってことですね。
土谷
はい。いいものが出来なかった場合でも、満足感というのがすごく重要な気がしていて。
hsbt
いいですね。これは若者には出てこない(笑)。
土谷
いやいや(笑)
hsbt
僕もRubyコミッターの方で憧れる人が何人かいます。1人は、前職で調整役なんかもやっていた時の話なんですが、僕が「コードだけじゃなく、クライアントとの調整で解決することもある」っていう話をしたら、その方から「いやー、エンジニアなんでコードを書く以外に解決できる問題なんて無いでしょ」って言われて…。もうね、反省した!みたいな。それ以降、コミュニケーションも大事だけれど、それよりもコードを書いて解決する、というエンジニアを目指してます。検証コードをかいて、こうやったら解決しました、みたいな。
常松
検証コードを書くの、すごいですよね。
hsbt
そう。ついつい話し合ってみんなが納得すれば運用でカバー、みたいなのが起こりがちなんですけど。コードで解決したいなと思いますね。もう1人の方はRubyの本体を沢山直している方で、「プログラマーにとってはつらい変更でも、プログラムが生み出したものを使うユーザーの不利益になるものは直すべき」という信条を持っている方なんですね。 その言葉を聞いて以来、何か作るときにユーザーにはどう見えているか、ということを強く意識するようになりました。このお二方はおそらく50歳近いんじゃないかな…。自分もそんな偉大な方に近づいていきたいなあ、と思っています。
土谷
なるほど…。
hsbt
はい、じゃあシーンとなってきたところで次の話題行きますか。
一同

健康が気になるお年ごろ

hsbt
昔と今を比較して、考えていることや悩みを聞いてみようかな。30歳すぎてから20代のころ思わなかったような、なんでこんなこと悩みだしたんだろう、みたいなのとかあります?
常松
俺は昔も今もあまり変わらないかも。自分にできないことの方に目がいって考えてしまうタイプなので。できないことを減らしたいから頑張る、みたいなのが続いてます。転職前だと、"インフラいじってます"っても自分の中ではやってる内容とか規模とかそれほんとにインフラって言えんの?という疑問があって。で、ペパボに入社した当時、27、8歳の頃はすごい成長してる実感がありました。で、4、5年くらいたって落ち着いてくると、また今の自分に出来ないことが出てきて「あれ、修行がたりなかった…」って。割とそういう繰り返しだったりします。 あとは、30過ぎて悩みだしたのは健康かな(笑)。
一同
爆笑

hsbt
じゃあ、そこもあえて触れましょうか(笑)。意識的に気にかけていることってあります?
常松
運動したりだとか。
hsbt
僕も腰とか眼精疲労とか、疲れがなかなか取れないのはあるんで若い時みたいに毎日終電まで、とかは厳しいですね。なので、集中してコード書く時は昼のうちにやってしまう、みたいなのは意識してるんですけど。土谷さんとかその辺はどうですか?
土谷
僕は、集中力が持つ時間が、どんどん短くなってきてる(笑)。健康という意味では、食べ物に気を使って和食中心にしてます。アレルギー持ちだったんですけど、和食中心にしてからはだいぶ調子がいいので、マジで仕事のパフォーマンスに影響するなと思いました。
hsbt
分かります!ぼくも、嫁任せだけど野菜増やしてもらうとか。
土谷
揚げ物控えるとかね。
hsbt
魚増やしてって。
常松
食事に関してはノーコメントで(笑)。でも、オフオンにメリハリ付けるだけで大分ストレスの度合いとか違いますよね。
hsbt
そうなんですよね。じゃ、健康の話からもどして土谷さんの最近の新しい悩みとか考え始めたことを聞きましょうか。
土谷
前職まではチームで何かやりたいなという思いが強かったですね。ペパボに入ってからはみんなで集まってものを作るっていう文化があって、それが自分にとってすごく良い環境なんでそういう意味では昔悩んでいたことは解決されているかな。逆にプライベートで作ったりしてるものに関して、悩みというほどではないけど1人で色々できるようにしていかないとな、というのがあって。デザインとかもやりたいと思ってますね。悩んでいるのとはちょっと違うけど。
hsbt
何かを世の中に出す時って、少なくとも使ってもらってフィードバックが欲しいから世の中に公開するんだと思うんですけど、最近それで求められるレベルが上がりすぎてるっていうのが関係していたりしません?趣味で作っている人のWebサイトでも、動くということはもちろん、さらに良いデザインだったり、動作が速かったりが要求されているような。

土谷
そうですね。趣味で出来る範囲っていうのはエンジニア一人だとものすごく限られちゃう。なので、エンジニアだからこそできる、技術的にすごいプロダクトを作るっていう方法とか、コンテンツにめちゃくちゃ注力して、誰でも…例えばつねさまのお母さんにも分かるようなアプリケーションを作るのがいいかなって。
常松
つっちーは色々作ってるよね。REMP(※2)とかtriph(※3)とか。
(※2)REMP みんなでプレイリストを共有する作業用BGM再生アプリ。ソーシャルジュークボックスと称している。
(※3)triph 旅の音声ガイドアプリ。平たく言うと博物館などでよくある音声ガイドの街案内板。
土谷
REMPは結構前につくったやつですね。triphは去年のお産合宿で開発したWebサービスなんですけど、レスポンスとかオーディオ周りとかWebならではの制約があって結局iOSアプリとして作り直しました。
hsbt
へー。Objective-Cで作ったんですか?
土谷
ですです。
hsbt
Swift(※4)が出た後にこれは辛いですね(笑)。
(※4)Swift Apple が発表した Objective-C を置きかえる新しい言語
土谷
つらいです…また作り直しになりますね…。
hsbt
話を戻すと、エンジニアやプログラマーが得意とする領域の違いが大きくなりすぎているのでそれを複合的に組み合わせないと人々にはインパクトを与えづらくなってきていると。
土谷
そうですね。大変ですが、悩みつつもそれはそれで面白いとも思ってます。
hsbt
なるほど。面白い、つまり自分も領域を広げていかないと、みたいなことを考えているわけですね。
土谷
広げていきたいなと思ってます。作ったものが見向きもされないのは嫌なので。
hsbt
嫌ですね〜(笑)


~第3話へつづく~